不眠症の最も一般的な治療方法である「睡眠導入剤」について、その仕組みやメカニズムを見ていきましょう。

現在主流となっている薬は、脳の興奮を制御する「ベンゾジアゼピン系」と「非ベンゾジアゼピン系」と言われる2つのお薬です。

・ベンゾジアゼピン

GABAという脳内の抑制性の神経伝達物質の働きを助けることによって鎮静・傾眠作用を表します。短時間型から長時間型までの種類があり、2022年現在一番使われている睡眠導入剤です。筋弛緩作用がふらつきや転倒などを招くことがあり、耐性や依存性があります。

【薬品名】

 超短時間型:ハルシオン(トリアゾラム)

 短時間型:レンドルミン(ブロチゾラム)・エバミール/ロラメット(ロルメタゼパム)・リスミー(リルマザホン)・デパス(エチゾラム)・サイレース/ロヒプノール(フルニトラゼパム)

 中間型:ユーロジン(エスタゾラム)・ベンザリン/ネルボン(ニトラゼパム)

 長時間型:ドラール(クアゼパム)

・非ベンゾジアゼピン

ベンゾジアゼピン系を改良して、筋弛緩作用を少なくしてふらつきや転倒などの副作用を減らしたもので安全性、耐性、依存性もベンゾジアゼピン系より少ないと言われています。ただ欠点としては非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、作用時間の短い短時間型しかありません。

【薬品名】

 超短時間型:マイスリ―(ゾルピデム)・アモバン(ゾピクロン)・ルネスタ(エスゾピクロン)

 

また近年では睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整するため耐性がなく、極めて依存性の少ない薬も出てきました。

・メラトニン受容体作動薬

メラトニンという睡眠覚醒のリズムをコントロールする脳内物質があります。夕方から夜間にかけてメラトニンの濃度が上昇することで自然な眠気が生じるとされています。そこで、メラトニンと同じように脳内に作用することで自然な眠気が生じることを目指した薬ですが、効果が弱く個人差があります。2014年発売。

【薬品名】ロゼレム(ラメルテオン・メラトベル

・オレキシン受容体拮抗薬

視床下部から放出される覚醒ホルモンであるオレキシンを抑制し,覚醒レベルを低下させることで眠りに導くお薬です。中途覚醒や早朝覚醒には一定の効果がありますが、入眠障害には効果が弱く、レム睡眠を増加させて夢が増え悪夢となってしまうことがあります。2015年発売。

【薬品名】ベルソムラ(スボレキサント)・デエビゴ

 

以上、4種類のお薬が睡眠導入剤として一般的に普及しているものですが、効果が高く汎用性のある「ベンゾジアゼピン系」は、ふらつきなどの副作用に加え耐性や依存性が高く、長期服用により効き目が減少したり、急な減量や服用を中断すると服用前より強い不眠が現れたり、不安、振戦、せん妄、幻覚などの離脱症状が起きるなどリスクが伴います。「非ベンゾジアゼピン系」は副作用はないものの、依然耐性や依存性はあります。一方で近年開発された「メラトニン受容体作動薬」や「オレキシン受容体拮抗薬」は体内の生理的な物質の働きを調整するので、耐性がなく依存性は極めて少ないのですが、体に優しい分ベンゾジアゼピン系と比べて、効果が弱かったり個人差がかなりあるようです。