寝違えはある時から急に首の痛みが現れ、首が動かせない状態になることです。朝起きた時が一番多いので「寝違え」と言われますが、後ろを振り向いた時や長時間同じ姿勢をしていて動き出した時など、日中起きている時も急に発症することがあります。また首だけでなく肩、肩甲骨あたりや背中まで痛むこともあり、少しでも動かすと酷い痛みが出るので首が固まったようになります。
ここでは実際に「寝違えで首の後ろが痛い、首が動かない、唾を飲み込むのも痛い」といった患者さんの治療症例を上げながら、寝違えの症状や原因、自分で出来る治し方や予防についてお話しします。
寝違え、首が痛くて動かせない(29才♀)Aさん

主な症状
・来院4日前の朝、起床時に首が痛み、首が動かなくなり治らない。症状が改善されない。
・以前にも寝違えたことがあり、自然に治ったので今回も放置していたところ痛みが肩や背中まで悪化。唾を飲み込むだけでも痛く、食事が出来ない状態になってしまいました。
治療方法
<検査> 頚椎C5~T1のかなりひどい狭窄。腕のしびれはないがひどい猫背で、背中~腰まで硬く、腰椎の生理的な弯曲がなくややストレートネック。首の左右・下の動きは多少出来るが、上向きが出来ない。椎間板の炎症は収まっている。
1回目 :首だけでなく肩・肩甲骨周り、背中を施術。肩まで広がっていた痛みは消え、お茶が飲めるようになった。首や背中もかなり緩んだが、上を向いたりして左の首の付け根を圧迫すると痛みが出る。
2回目 :翌日、本人は昨日と比べ段違いに良くなったと言う。しかし骨の狭窄が治ったわけではなく、肩甲骨周り背中もまだ硬い。
3回目 :2日後痛みが減ったので、仕事をし過ぎて、再び唾を飲み込むだけで痛みが出て、通勤前の朝一番に来院。首の骨の両側が硬いが、右の方はたいぶ良くなったので側臥位(横向き)で角度を変えて施術。だいぶ楽になった。
先生のコメント
寝違えと言ってもかなり重症の患者さん。日々のハードなデスクワークと悪い姿勢で、首骨の間が狭窄して神経や血管を圧迫していた所に寝違えが起こったようです。つまり普段から首や肩に負担がかかっていて、以前寝違いがあった時にしっかり治療しなかった為、今回は重症になってしまった。ここでしっかり治療しないとまた同じことが起きるし、さらに悪くなる可能性が極めて高いと思われます。
ぎっくり腰と同じで何回かやっていて、その都度痛みが取れても、しっかり治療しないと、回数を重ねるごとにひどくなり、治るのも遅くなるのです。
寝違えによる激痛の原因とは
「寝違え」は正式名称ではなく「急性疼痛性頸部拘縮(きゅうせいとうつうせいけいぶこうしゅく)と言い、医学的に診断すると「頚椎症」になります。
朝起きた時に発症することが多いので「寝違え」と言われ、寝た時の姿勢や枕が原因とされますが、あくまでもそれはきっかけに過ぎません。治療症例のAさんのようにハードなデスクワークによる悪い姿勢など日常的に首に負担をかけ、頚椎の間が狭く柔軟性がなくなった首を急に動かしたことによって、頚椎の関節や椎間板に炎症が起きるのが「寝違え」です。炎症が激しいほど少し首を動かすだけでも激痛が走り、首を動かすことが出来なくなってしまうのです。

首の寝違えがもたらす症状
「寝違え」によって首の可動域が制限されることにより、上を向けない、左右に傾けられない、後ろを振り向けないなど日常動作に影響が出る為、仕事や家事に支障をきたす方が多いです。また横になって安静にしていても首が痛むような場合は寝不足になったり、頭への血流がスムーズに行かなることで頭痛が起きたりすることもあります。
このような重症な状態が続くと体は常に緊張して交感神経が優位になり、寝不足や後頭部の血流不足により副交感神経の働きが弱くなるため自律神経のバランスも乱れて来ます。
背中の痛みとの関係
また「寝違え」によっては背中まで痛みが広がることがあります。関節や椎間板に炎症が起きると頚椎周りの筋肉は固くなり、それ以上炎症が進まないように首の動きを制限して守るようになります。すると首周辺の筋肉が伸縮することが少なくなるので血行が悪くなって行きます。首の後ろの僧帽筋や肩甲挙筋が固まることで肩や背中も動きずらくなり、放っておくと首だけでなく肩や背中まで痛みやしびれが生じてしまうのです。
ストレートネックの影響
現代のデジタル化により「ストレートネック」や「スマホ首」が急増しています。治療症例のAさんもハードなデスクワークで悪姿勢が習慣化していたように、長時間のパソコンやスマホ作業や運動不足による筋肉低下で背中を丸める猫背姿勢が増えています。背中が丸まると首は前方に突き出るので、頚椎は本来のしなやかなカーブを失いまっすぐなってしまいます。これが「ストレートネック」で重い頭が体の重心軸から前方に離れるため、頚椎を支えている筋肉や軟骨(椎間板)に大きな負担が強いられます。このような状態でさらに不自然な寝方で首を圧迫したり、急に後ろを振り向くなど首に刺激が加わると、寝違えを引き起こす可能性が非常に高くなります。実際に寝違えの方がレントゲン撮るとストレートネックと診断されることはとても多いのです。

飲み込むと痛い?寝違えの症状を理解する
実例Aさんの症状には「唾を飲み込むだけでも痛く食事が出来なくなった」とありました。これは寝違えと関係があるのでしょうか?実は寝違えの原因になってる猫背とストレートネックに深く関与しています。
飲み込み(嚥下)のメカニズム
普段私たちは1日3度の食事だけでなく、1日に約500~1000回も唾液を何の意識もなく飲み込んでいます。
口の中にたまった唾液を「ごっくん」と飲み込む時、喉を触ったり見ていると喉仏が上下に動くのが分かりますね?これは喉の奥に唾液が送り込まれると舌骨が喉仏(喉頭の一部)を前上方へ挙上し、食道入口部を開いて唾液や食べ物を食道へ送るからです。この動きを医学用語で「嚥下」といい、私たちはほとんど無意識で行っていますが、気管や鼻への逆流を防ぎスムーズに胃に運ぶ一連の動作きは、さまざまな筋肉が絶妙なタイミングで動いて成り立っています。
ストレートネックと嚥下障害
ところがストレートネックにより頚椎の前方へのカーブが失われると喉の位置が後ろに引っ張られ、この嚥下動作に重要な働きをする舌骨周辺の筋肉の動きが制限されてしまいます。また食道や気管の入口も圧迫されて狭くなりスムーズに飲み込みにくくなるだけでなく、何も飲食していなくても喉が詰まったような違和感が出たり、むせやすくなったり、声がかすれたりします。
これは「嚥下障害」と言われ、特に高齢者にとっては誤嚥性肺炎などに結びつく大きな問題として取り上げられていますが、予防策として「軽く顎を引いた正しい姿勢で食べる」という事が言われています。つまりストレートネックや猫背の悪い姿勢が嚥下障害の原因の一つとして考えられているのです。
自律神経との関係
また忘れてはならないのが自律神経です。ストレートネックにより頚椎間が狭まると後頭部(脳幹)が圧迫されるため自律神経のバランスが崩れます。副交感神経の働きが弱くなり喉のぜん動運動が低下して、喉が締めつけられるような感覚やつまりを感じやすくなります。器質的障害は何もなく自律神経の乱れによって引き起こされるこのような喉の違和感は「ヒステリー球」と言われてストレスが大きく影響します。
自律神経失調症の診断テストで不調の原因を知ろう
痛みが伴う理由(負の連鎖 悪循環 日常生活への影響)
このように寝違えの原因の一つとされている「ストレートネック」が頚椎(首の後部)で炎症を起こし、また喉(首の前部)も圧迫して嚥下障害を招いているという事で悪循環になっています。首の後ろで炎症があるのですから、首の前を動かせば痛みが響くのは当然でAさんは食事も出来なくなり、栄養が取れなくなってストレスも増えていきます。
不調の連鎖や慢性的な痛みはますます交感神経を優位にさせ、副交感神経が弱くなり消化機能や睡眠などにも影響が出てきます。毎日が憂鬱になり知らず知らずに精神的な症状に発展してしまうことも少なくありません。
こうなると日常生活にも支障をきたし、仕事や家事が出来なくなるばかりか、ベットから起き上がることさえ出来なくなってしまいます。
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寝違えの治し方
寝違えが起きた時の対処法はまずは安静にすることです。無理に首を動かさずに横になったり、コルセットなどで首をサポートしてあげるのもいいです。また痛みがひどかったり、熱をもっている場合は保冷剤や氷などで冷やします。熱が冷め痛みが落ち着いてきたら今度は温めたり、軽いストレッチをして血流改善を図ります。
鍼灸やマッサージの施術
寝違えはむやみに鍼灸やマッサージをしてはいけません。しかし少しでも早く痛みが取りたい場合や、何度も繰り返す方は再発や頚椎症への悪化を防ぐために治療が必要です。必ず専門知識や症例のある治療院で施術を受けましょう。
治療の基本ステップ
当院ではまず寝違えの発症の原因、患部炎症の有無、首の可動域を確認後、神経・血管の圧迫テストを行った上で施術を開始します。
※うつ伏せ姿勢がきつい場合は仰向けや横向きなど無理のない姿勢で行います
【炎症がひどい場合】
まず首への圧迫は避け患部はアイシング(冷却)を行います。次に肩や背中など首と繋がっている筋肉を緩め首への緊張を取り負担や痛みを軽減します。鍼治療は首に関係する手のツボに鍼治療を行います。
【炎症が治まっている場合】
可動域検査をした上で首、肩甲骨、背中を中心に施術を行います。初回は軽めに施術して血流を改善します。2回目以降は前回の反応を見ながら肩甲骨のストレッチなどで、首への負担を軽減しつつ深層部にもアプローチしていきます。いずれも痛みのない治療で緊張した筋肉をゆっくり緩め、自律神経を整えてからだ全体の力みを取っていきます。
Aさんの場合炎症は治まっていましたので、初回から首を含め肩甲骨や胸骨の筋肉を軽く緩め、背中から腰までのバランスを整えました。2回目で肩甲骨の可動域を広げ上半身のバランスを、3回目で骨盤の調節をすることで全体のバランスを整え、土台から首への負担軽減を図りました。
ロキソニンなどの薬の効果
いまでは一般の薬局やドラッグストアでも手に入るロキソニン。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)として、炎症を抑える効果があります。短時間で痛みを和らげ、持続的な効果を発揮するため、寝違えの急性期に非常に有効です。ただし胃に対する負担があるため、胃薬と併用することが推奨されます。
一時的な効果ではありますが、痛みが抑えられている時に無理のなく動き軽いストレッチなどで血流を改善することで炎症を緩和することが出来ます。
整形外科、接骨院と整骨院の選び方
整形外科では、レントゲン画像で骨の変形など、寝違いの原因となる病気の可能性を診断し、必要に応じて内服薬(消炎鎮痛薬や筋弛緩薬)、外用薬(鎮痛消炎効果の湿布)を処方します。痛みが強く、首の動きが大きく制限される場合は、局所麻酔薬の注射を打つこともあるでしょう。リハビリ施設のある所では理学療法士による施術が行われます。また整骨院・接骨院でも短時間の施術を保健治療ですることが出来ます。
保険治療は費用負担が少ないのでいいのですが、治療時間や部位の制限があるため患部のみの治療しかできません。
治療の金額
回数券などもありますので、定期的に通われる方はおすすめです。
自分で出来る寝違えの治し方
治療をした方がいいに決まっているけど、仕事があってすぐに治療に行けないとりあえず自分で何とかしたいという方もいらっしゃると思いますので、ここでは「自分で出来る寝違えの治し方」と「絶対にやってはいけないこと」をお話しておきます。
まず患部に炎症があるかを確認します。触って熱感があれば炎症がある証拠です。もし良く分からない場合は入浴やカイロなどで温めた時に痛みが増幅する場合は炎症があると認識して下さい。
【急性期(炎症)】はとにかく冷やす。氷のうや保冷剤などでアイシングして、出来るだけ首(頚椎)に負担のない姿勢、横になる、コルセットをするなどします。どうしても座っていなくてはなくてならない時は背もたれや壁に頭をつけたり工夫してください。また痛みのひどい場合は入浴や飲酒を控えましょう。炎症を抑える湿布や鎮痛剤も有効です。
✕ 絶対に痛みのある方向に動かしたり、ストレッチや局部的なマッサージをすることはしないで下さい。
神経の圧迫が考えられる症状
無理な姿勢が習慣化されて首こり肩こりが常習化してたり、寝違え繰り返していたりすると頚椎や筋肉で神経を圧迫している可能性もあります。下のような場合は自分では治りませんのですぐに専門医の診断を仰ぎましょう。
頚椎症性神経根症
骨棘(変性した骨のとげ)や、椎間板ヘルニアなど頚椎の変形により脊髄から分岐した神経根が圧迫されます。症状としては腕や手指までしびれが生じ重症な場合は麻痺が見られます。
頚椎症脊髄症
頚椎の変形により脊髄神経が圧迫されます。首から下肢の広範囲にしびれや痛み、脱力感が見られ、重症な場合は歩行困難や排尿困難など膀胱や直腸障害に発展します。
頚椎間板ヘルニア
頚椎の間でクッションの役割をしているの椎間板の中身が飛び出して、神経根や脊髄を圧迫してしびれや痛みが生じた状態です。
慢性化した痛みへのアプローチ
【慢性期】炎症が治まり痛みは緩和されたものの、首の可動域が制限されていたことによる血行不良で首の筋肉がこわばり動かしずらい時は、温めたり動かして血行を促進しながら徐々にストレッチやマッサージで筋肉を緩めて可動域を広げていきましょう。蒸しタオルや入浴、カイロ、鍼灸も有効です。
✕ ここでも局所的な強いマッサージは絶対にしないで下さい。首の筋肉はとても小さく繊細なので初めは手のひらや指の平を広く使ってゆったりと擦ったり円を描くように動かしましょう。首の後ろだけでなく、横(耳の下)や頭の付け根、また肩や背中など関連部位のマッサージをすることで首への血流も促進されます。
✕ また首を過度に曲げるストレッチも絶対にやめましょう。
可動域を広くしたいのは分かりますが、動かない方向だけに無理に動かすことは避けましょう。逆に動く方向にストレッチしてから、頭の重さを手で支えながらゆっくり20~30秒かけて7~8割程度の角度で深呼吸しながらストレッチします。必ず一方向だけでなく出来れば360度を8分割して行いましょう。
また肩関節や背骨全体や骨盤周りのストレッチを並行してやることで、姿勢が整いS字のバランスの良い背骨を作ります。
まとめ
慢性期は炎症が治まっても頚椎関節の狭窄や筋肉の硬結など痛みの原因がまだありますので、過度な刺激は炎症の再発につながります。炎症部位(首)を刺激するのではなく、首全体の筋肉バランスやからだ全体の血流を改善して炎症部位(首)に新鮮な血液を送り、猫背やストレートネックなどを改めて首に負担のない姿勢を心がけましょう。
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首を寝違えて痛みがあるときの寝方
朝起きたときに首が痛くて動かせない「寝違え」。痛みがある間は、無理に動かさずに安静にしながら、適切な寝方を意識することが大切です。ここでは、寝違えたときに少しでも楽に眠れるような工夫を紹介します。
1. 体の向き
仰向け寝が基本
寝違えたときは、できるだけ仰向けで寝るのが理想的です。仰向けになることで首に余計な負担をかけず、バランスよく支えられるため、回復を助けます。
横向き寝をする場合
痛みが強く仰向けがつらい場合は、痛くない側を下にして横向きに寝るとよいでしょう。このとき、首が不自然に曲がらないように、枕の高さを調整することが重要です。
2. 枕の高さと調整方法
適切な枕の高さ
寝違えたときは、首をできるだけ自然な位置に保つことが大切です。枕が高すぎると首が前に押し出されてしまい、低すぎると頭が落ち込みすぎて首に負担がかかります。
仰向けの場合:首と頭をしっかり支えつつ、首のカーブが自然に保てる高さの枕を使う。
横向きの場合:首と背骨が一直線になるように、肩幅に合わせた枕の高さを選ぶ。
タオルを使った調整
枕の高さが合わないと感じる場合は、タオルを活用しましょう。
枕が高すぎる場合 → バスタオルをたたんで枕の下に敷き、高さを調整する。
枕が低すぎる場合 → タオルを重ねて枕の上に置き、首が安定する高さにする。

3. 痛みを和らげる寝方の工夫
首の角度を固定する
寝違えたときは、首が動きすぎないようにするのがポイントです。首が痛む方向に倒れないよう、以下の工夫を試してみましょう。
仰向けの場合:首の後ろに小さく折りたたんだタオルを入れて、自然なカーブを保つ。
横向きの場合:首の下だけでなく、体の横にクッションを置いて、寝返りを減らす。
抱き枕を活用する
横向きで寝る場合、抱き枕を使うことで体のバランスが取りやすくなります。腕や脚を乗せることで、首や肩への負担を減らせるのでおすすめです。
4. その他の注意点
うつ伏せ寝は避ける:首が強くねじれるため、痛みが悪化する可能性があります。
急に動かさない:朝起きるときは、ゆっくりと起き上がり、急な動作を避ける。
温めるor冷やす?:炎症が強い場合は冷やし、筋肉の緊張が原因の場合は温めるのが効果的です。
まとめ
寝違えたときは、痛みを悪化させないように注意しながら、楽な姿勢で寝ることが大切です。仰向けまたは痛みが少ない横向きで寝るようにし、枕の高さを調整して首に余計な負担をかけないようにしましょう。整体と併せて、適切な寝方を意識することで、より早い回復を目指せます。
仕事への影響と対策
痛みで首が動させない、座ったり立っているだけでも痛いとなれば、日常生活はもちろん仕事や家事にも支障が出ます。それでも安静にしていられない休めない方も多いかと思います。そもそも仕事や家事の姿勢が根本原因なのに、痛みがある時ぐらい身体を思いやって欲しいと言いたいところですが、そんな方に2つアドバイスさせて頂きます。
身体のバランスを保つ重要性
寝違えの原因や治し方をお話して来たので、何となく寝違えは首だけの問題ではないことがお分かりいただけたと思います。普段は悪い姿勢で首に負担をかけていても痛みがありません。しかし今は強い痛みがあり少しでも緩和させたいので、出来るだけ首に負担をかけない姿勢を取ろうとするはずです。ですから痛みのある今だからこそ姿勢の大切さを体感できるのです。姿勢を正すと痛みが軽減されるので、逆に考えれば正しい姿勢を身につけるチャンスと言えるでしょう。
両手を組んで首を挟みながら後頭骨に当てます。軽く顎を上げて後頭を両手に乗せる様にしてみて下さい。痛みが和らぎませんか?背中を丸めて首を前に出している姿勢とは逆で胸が開き頭は後ろにあると思います。痛みがないようでしたら、そのまま(決して反らしたりせずに)ゆらゆら横に揺れたり、深呼吸でさらに肺に空気を入れて膨らましてみましょう。

動けない時の工夫
全く動けない時は炎症がひどく動かしてはいけないというSOSの合図ですから、出来るだけ横にして首を休めてあげたいですが、どうしても寝てられない場合はコルセットで首を支えてあげましょう。頚椎の負担が減り炎症が治まりやすくなります。
しかしコルセットもなくディスクワークをしなくちゃならない方は、肘を机について顎から耳の下辺りで後頭骨を手で支えて、つっかえ棒のようにすると頭の重さを軽減することが出来ます。なるべく頭を前に出さないようにして、こまめに休憩を取り背もたれや壁に頭を預けて首を休ませましょう。
寝違えを防ぐためにできること
寝違えはぎっくり腰同様に繰り返す方が多い症状なので、普段からしっかり予防対策しておくことが大切です。
その中で一番大切なのはやはり姿勢改善です。首に負担をかけない姿勢とはS字の背骨を骨盤で支え、頭が骨盤の真上に位置することです。また日中頭を支え続けた首を入浴でしっかり温め血行を改善して、1日1回リセットさせましょう。また睡眠は首を頭の重力から解放させる時間です。副交感神経を働かせリラックスできる環境で最低でも6~8時間は休ませてあげましょう。

睡眠姿勢の改善
寝違えのきっかけとしてよく言われるのが「睡眠時の悪い姿勢」です。
・ソファでウトウトしてそのまま寝てしまった
・長時間フライトや深夜バスでの睡眠
・寝る前にスマホを見ながら寝落ちした
・旅行先や新調して慣れない寝具を使った
・寝返りが打てないような狭いところで寝た
このような不自然な姿勢で血管を圧迫して固くなってしまった筋肉は寝違えを起こしやすいです。
また筋肉を硬直させる原因として、エアコン冷気や朝方の気温降下による冷え、高さの合わない枕やマットレスなどの寝具の問題、過度な飲酒による水分不足などもあげられます。
身体のストレッチと緊張緩和
首の筋肉の柔軟性を高めるには、ストレッチや適度な運動で全身の血流を循環させることが有効です。
就寝前の入浴をシャワーだけで済ませるのではなく、しっかり湯船につかり全身が温まった状態でストレッチをすると筋肉の緊張が取れやすいです。無理に伸ばすのではなく深呼吸に合わせてゆったり行うことで副交感神経が働き、身体の力が抜けてリラックスして睡眠に入れます。伸ばすというよりほぐすイメージで脱力して行いましょう。
ストレッチも出来ないほど疲れた時は仰向けで両手、両足を少し開き、腰や腕をゆらゆら揺らし、首もコロンコロンと転がます。そのまま3分くらい深呼吸を繰り返して、吸った時に肺の膨らみを吐いた時は手足の脱力を感じましょう。副交感神経がさらに働き睡眠の質が高まります。
日常生活での負担軽減
またデスクワークではパソコン画面を目の高さに揃えたり、キーボードの位置を調整して長時間作業に備えて環境を整えましょう。またスマホを見る時間も出来るだけ少なくしたいものです。電車やバスに乗っている時や外出時は、なるべく窓の外や遠くの景色を見てると自然に背骨もまっすぐな姿勢になり目も休まります。
またストレスによる自律神経の乱れは身体に力が入りやすく、交感神経が優位になり過ぎると血管が収縮して血流が悪くなります。ストレス解消法は人それぞれですが、あまり溜め込み過ぎないうちにこまめにガス抜きをしてリラックスできる時間を作りましょう。

寝違えQ&A
痛みの改善に時間はかかる?
痛みの程度や身体の健康状態にもよりますが、寝違えはふつう数時間~1週間程度で自然に改善されます。しかし軽度の場合でも数日痛みが続くと仕事や家事などに支障があります。また強い痛みが続く場合や、何度も寝違えを繰り返した場合は治療に2週間以上かかる場合もあります。
湿布は有効?
最近の湿布は鎮痛成分が含まれているので有効です。しかし長期使用はかぶれ等の原因となるのでおすすめ出来ません。発症から2日間程度炎症があるときに使い、炎症が治まったら血行を良くして筋肉を緩めましょう。
回復に必要な時間の目安は?
軽 症:首が痛いけれど、ある程度動かせるような場合です。2~3日で痛みがだいたい治まります。
中等症:首が痛くてあまり動かせないけれど、横になれば痛みは楽になる場合です。発症当初は首の痛みが激しいかもしれませんが、徐々に痛みが軽くなり、1週間位で痛みが治まります。
重 症:首が痛くて全く動かせず、動かそうとすれば激痛が走ります。横になっても痛みが楽になる位置が限られます。重症では痛みが無くなるまでに2週間からそれ以上かかります。痛みが慢性化してしまう人もいます。
来院のタイミングはいつが良いですか?
重軽症で多少異なりますが、炎症が治まる2~3日後が来院のタイミングです。炎症が治まっているとしっかりと患部にアプローチした施術が出来るので治療効果も早く感じられます。しかし痛みに耐えられない、少しでも早く痛みをやわら出たい方は遠位のツボを使う鍼灸などを併用して治療することが出来ます。また肩回りや背中の筋肉がほぐれることで、自律神経の圧迫が改善され身体の力みがなくなり楽になるでしょう。
寝違えは枕のせい?どんな枕が首に良いの?
首が悪い人は起床時に辛いことが多いので枕が原因と思われる方が多いです。
寝た時に肩と首の間の隙間を埋めるのが枕の役目です。丸めたタオルなどを首に当て高さを調節するのもいいですが、寝る前のストレッチなど首の筋肉を緩める事が大事です。また背骨、骨盤などから全体を軽く緩めるとさらに安眠効果もあり有効です。

寝違えの患者様の治療症例
病院で診断された機能性発声障害。1年以上声が出なかったのにわずか10日間で、患者さまもビックリするくらいの声が出ました。
姿勢の悪さとストレスから来る首の痛み、頭痛、吐き気。動かなかった首が姿勢矯正しただけで動くようになりました。悪い姿勢が血管や神経だけでなく、食道や気管を圧迫してしまってたんですね。
寝違えで眠れないほど辛い。炎症が伴う強い痛みには血行促進させ、炎症を抑えてから、筋肉を回復させ可動域を広げます。
Topics
他の病気との関連性
のどの痛みや飲み込むとのどが痛いという症状には下のような病気が潜んでいる場合があります。痛みが強かったり長く続くようなら自己判断に頼ることなく専門医に診てもらいましょう。
細菌やウイルスは多くの場合、鼻や口から侵入し、粘膜で炎症を起こします。
アレルギー性鼻炎
花粉などの季節性のアレルギーと、ハウスダストなどの通年性のアレルギーによって引きおこされる鼻炎で、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの他、のどに痛みがでることがあります。
副鼻腔炎
鼻とつながった空洞で細菌やウイルス感染により炎症が広がったり、鼻水が喉に垂れる後鼻漏で喉が炎症を起こすことがあります。
扁桃腺炎
のどをあけたときに左右に見える口蓋扁桃が細菌やウイルスに感染し、炎症を起こしている状態です。腫れや痛みの他発熱の症状もあります。
声帯炎、ポリープや腫瘍
喉の使い過ぎなどで喉の奥の声帯に炎症が起き、ポリープが出来ることがあります。また喉頭がんなどの腫瘍もあり、痛みのほかに声がれ、異物感などがあります。
甲状腺機能の異常
甲状腺は喉仏の下あたりに位置していて、新陳代謝や身体の成長などにかかせない内分泌器官です。
バセドウ病や橋本病になると、この甲状腺が腫れてしまうため甲状腺自体が痛んだり、のどへ痛みが及んだりします。
監修者
未病堂治療院 院長 岡本陽子
中国気功整体師(歴18年)
2010年綱島に治療院を開業14年間、自律神経失調症に特化した整体・鍼灸治療に携わる
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タグ : 首こり・寝違え